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「森のはこ舟フォーラム」を終えて

今年度の「森のはこ舟アートプロジェクト」の始まりに際し、福島県立博物館・講堂にて「森のはこ舟フォーラム」が開催されました。

今回のフォーラムのキャッチコピーは“森人の声に耳を傾ける”。
これは、アーティストとともに森に分け入り、さまざまな活動を続けてきた各エリアのワーキンググループの思いから生まれたテーマです。
“森人”とは、すなわち山間部に暮らす人々や森の恵みを享受する暮らしを続けている人々のこと。私たちはリサーチやワークショップを進める中で多くの“森人”に出会いました。そして、彼らの声を聞き、その思いを知らない限りは、本当の意味で地域が望む成果には繋がらないと感じ、その気付きをそのままテーマに掲げることとなったのです。

フォーラムの第1部では、まずディレクターの伊藤達矢さんより「森のはこ舟アートプロジェクト」の概要説明がなされました。

その後、喜多方市・西会津町・三島町の3エリアで活動してきたワーキンググループの代表が登壇し、昨年の活動報告を行いました。

喜多方ワーキンググループからはコーディネーターの金親丈史さんと佐川友美さんが登場。

地域の人々へ協力を得るための意思疎通の図りかたや、プロジェクトを進める上での試行錯誤を等身大の目線で語ってくれた佐川さんの語りに、会場からは時折あたたかな笑い声も聞かれました。

続いて西会津ワーキンググループからは蒲生庄平さんが登場。

西会津町は、昨年の片桐功敦さんの「草木をまとって山のかみさま」が今年は町内主導のイベントとして開催されるなど、アートプロジェクトの枠を越えた展開も生まれている場所。地域活性化の目線で、プロジェクトがどのように町の人々に受け入れられ、根付こうとしているかを語っていただきました。

最後は三島町のコーディネーターを務める三澤真也さん。

間方地区を舞台に行ったEAT & ART TAROさんの「食のはこ舟」の事例をもとに、地域の文化を後世に残していくための、“手段としての”アートプロジェクトのあり方を解説してくださいました。

3地域の発表に共通していたのは、山深い会津のさらに奥では、「現代アート」を地域の人々に伝えるのがいかに大変かということ。そして、それを解決するためには地域との密なコミュニケーションが大前提である、ということでした。知られざるプロジェクトの裏側に、集まった観客の方々も熱心にメモを取りながら聴き入っていました。

第2部では、福島県立博物館の館長で本プロジェクトの実行委員長でもある民俗学者の赤坂憲雄氏と各エリア登壇者によるトークセッションへ。

「アーティストって変人ばかりですよね。しかも、アートなんて説明しても全然わけがわからない(笑)。でも、わからないから人を繋ぐことができるんです。地域に異端者が入って、停滞していた空気をかき混ぜることで、新たな一体感を生み出すことができると感じています」とは、赤坂氏の談。

加えて、“アート初心者”ばかりが集まって展開した1年間を振り返って、「アートプロジェクトは人を育てる場になる」という力強いお言葉もいただきました。

若者たちが街へ出ていき、過疎化が進む会津の山村。しかしそこには、古来より森人たちが紡いできた文化が、伝統が、暮らしの知恵が今なお息づいています。その素晴らしさに改めて気づかせてくれるものがアートであり、アーティストたちであるという赤坂氏とのトークは、コーディネーターのみならずスタッフ一同にとっても、「森のはこ舟アートプロジェクト」の意義を見つめ直すよい機会となりました。

フォーラムの最後に設けられた質疑応答の時間。
さっと手を挙げられたのは、喜多方エリアで活動中の岩間賢さんのプロジェクト「楚々木樂舎」にご協力いただいているコウさんでした。

「おかげで集落が元気になりました。ありがとうございます!」

そう言って、ステージ上の登壇者に深々と頭を下げられた姿に、会場から惜しみない拍手が贈られました。ありがたい激励の言葉に、わたしも思わずウルッときてしまったことをこの場を借りて告白いたします。

まだまだ進み始めたばかりの「森のはこ舟」ですが、こんな風に活動を楽しみにし、アートを受け入れてくださる方々が少しずつ増えていることは、大きな希望でもあります。
会津の森から飛び立ったはこ舟が、その内に何を乗せ、どこへ導いてくれるのか。どうか一緒に見守っていただければ幸いです。

(森のはこ舟アートプロジェクト実行委員会事務局 渡部あきこ)

2015.05.16

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